村上大輔
年末年始。おおよそ1年振りくらいの帰省をした。
新山口駅まで迎えに来させた弟は、最後に会った時より、落ち着いた見た目をしていた。
実家に帰る道中、お互いの近況を話し、すごくどうでもいい雑談を交えた。
山羊をかつての梨園跡地のスペースを使って飼い始めたことや、三頭のうち一頭が怪我をしたため、入院している事や、相変わらずお姫様気取りの愛猫の事などを話した。
地元の馴染みのラーメン屋で昼食を取り、実家へ向かう。
私の地元は下関とは言いつつも、市町村の大合併で下関市になっただけの、なんちゃって下関。
市街地なんてものはなく、人口も少ない山間の小さな村…そう言っても過言では無いほどの田舎だ。
ここから見える景色は30年以上変わっていない。
懐かしい空気と我が家。
家に着くと、早速買い始めたというヤギの元へと向かう。
母から聞いた話では生後一年も経っていない子ヤギらしい。
可愛らしい足取りで近寄ってくるが、頭を撫でようと手を差し伸べると、ピョンピョンと跳ねるように走って距離を取ってしまう。
やはり、初めて見る人間に警戒しているのだろうか?
まぁ、こんなもんだろうな、と思いつつ荷物を片付け、部屋でゴロゴロと漫画を読みながら夕飯までの時間を過ごした。
夕飯の時、母から小学校も閉校するという旨を知り、とうとう母校が全てなくなってしまうんだ…と少し淋しくなった。
目を閉じれば、なんとなく、うっすらと当時の思い出がぼんやりと脳裏をよぎる。
初恋の人、転校した友人、ブートキャンプレベルの準備体操、何故か本気になった菜園、秋の行軍訓練イベント『華山登山』。
あの頃一緒に馬鹿をやった同級生たちも、もうすぐ四十。
時代が流れ、変わったところが沢山あった。
それでも、当時の思い出というものは、なんとなく、うっすらとぼんやり覚えている。
記憶ではなく、体が覚えている。
楽しい思い出をありがとう。
さようなら、最後の母校。
私の中で、きっと培われたであろう何かを大事に持って、忘れずに生きていきます。
長い間ありがとうございました。
結局ヤギは最終日まで懐くことはありませんでした。
愛猫は、ごめんなさいしてやっと抱かせてくれました。
でも、ネズミ取ってくるのは勘弁な!!